1.成層火山としての磐梯山
磐梯山は環太平洋地域に多い安山岩質マグマによる火山です。このタイプのマグマはほどほどの粘り気を持つため、溶岩も流し爆発的な噴火で火山灰等も放出するなどの火山活動をし、成長とともに美しい成層火山となります。
猪苗代湖志田浜からの磐梯山
2.山体崩壊による成層火山の移り変わり
成層火山は、重力的に不安定で噴火や地震等をきっかけに山体崩壊・岩なだれを起こすことがあります。磐梯山は、約5万年前と西暦1888年の少なくとも二度、大規模な山体崩壊・岩なだれを起こし、流れ山地形をつくり周囲に大きな影響を与えました。これにより生まれた地形は、磐梯山ジオパークの大きな見どころです。
3.二度の山体崩壊と湖沼群
約5万年前の山体崩壊
約5万年前の山体崩壊は、表磐梯側で起き、南西に岩なだれが落ち、川をせき止めて猪苗代湖ができたと考えられています。猪苗代湖唯一の島である翁島(エリアI 59)は、その時に生じた流れ山のひとつです。その後、崩壊してできたカルデラの中にさらに新しい火山が誕生、成長して今の大磐梯(磐梯山)となり、会津富士とも呼ばれる優美な姿を見せています。
岩なだれ堆積物 エリアF39 | 磐梯町駅近く(磐梯山の南西約8km)にある岩なだれ堆積物の中の巨大な安山岩ブロック。磐梯山からかなり離れているので、かつては大寺火山(大寺とは磐梯町の中心地の地名)の存在が想像されていました。 |
1888(明治21)年の山体崩壊
1888年の山体崩壊は裏磐梯側で起き、水蒸気爆発により小磐梯を崩壊、消滅させ、岩なだれが477名もの命を奪い、流れ山地形とともに川をせき止め桧原湖など多くの湖沼群をつくりました。大地は悲惨な状況となりましたが、熱い溶岩流におおわれたわけではなかったので植生の回復は意外に早く、植林事業の努力もあって今は風光明媚な観光地となっています。
崩壊壁(爆裂火口壁)エリアD24 | 成層火山の山体崩壊により、崩壊壁に成層火山の断面がはっきり見えます! ふつう、成層火山の内部は見えないため、世界的に貴重なジオサイトです。 |
◆コラム:流れ山地形
山体崩壊
火山の爆発や地震によって起きる大規模な山崩れのこと。
岩なだれ
山体崩壊により大量の岩石や土砂が流れ下る現象のこと。
流れ山地形
岩なだれで流下してきた岩石や土砂が堆積してできた多数の小丘が分布する地形のこと。