見祢の大石と1888年の噴火
磐梯山の1888年の噴火と言えば、北側へ小磐梯が山体崩壊をして岩なだれとなり、甚大な被害を与えたことで有名である。しかし、南東側の猪苗代町にも同じような岩なだれが発生していたことはあまり知られていない。被災したのは猪苗代町の北東部に位置する渋谷(しぶたに)・白木城(しらきじょう)・伯父ヶ倉(おじがくら)から見祢にかけての地域である。その中でも見祢は噴火による被害地の南端に位置する。
1888年の噴火の被害図(中央防災会議)
この時の噴火では、岩なだれはヶ峰と赤埴山の間にある琵琶沢(びわさわ)にも流れ、合わせてブラスト(爆風)も発生した。琵琶沢を流れ下った岩なだれは、川の水と混じり泥流となって見祢集落を襲った。その泥流で流されてきたものが、見祢の大石である。この大石だけが有名となっているが、実は琵琶沢の途中には今でも大きな岩が点在している。
この見祢の大石は、高さ3.1m、長さ8.2mの巨大なもので、自らの重さで年々沈下し、現在はその3分の1ほどが埋没している。1941(昭和16)年には国の天然記念物に指定された。
見祢の全景(田中美代二撮影:国立科学博物館蔵)