【第四章】氷のアート其の一:しぶき氷

皆様こんにちは。ボル女です。
(ボル女をまだご存じではない方は、是非【序章】から読んで頂けますと幸いです。)
さて、今回は3回に分けて『氷』をテーマに書いていこうと思っています。

標高1816mの磐梯山の麓に広がるここ磐梯山ジオパークエリアには、この時期にしかアクセスできないジオサイトやこの時期にしか見られない大地の不思議があります。
まず第一回目は、猪苗代湖の『しぶき氷』についてご紹介いたします。

皆様も既に猪苗代湖のしぶき氷は聞いたことがある、見た事があるという方も多いかもしれません。
今年は例年よりも寒さが厳しい影響で、しぶき氷もぐんぐん育っていて、その美しい氷のアートは地元の新聞にも取り上げられました。
まずは、先日私が撮影に行った際に撮ったしぶき氷の写真をいくつかご紹介いたします。

2022年しぶき氷
2022年しぶき氷2撮影として晴れた日を狙っていった甲斐があり青空としぶき氷のコントラストが美しいです!

しぶき氷は猪苗代湖の数カ所で見ることができますが、一番メジャーかつ大迫力で見れる場所は
天神浜からのアクセスとなります。
小平潟天満宮の目の前にある無料駐車場に車を置き、そこから15分ほど歩いて向かいます。
駐車場にもしぶき氷の看板が立っていて迷う事はほぼないです。
*しかし、写真でも分かるように地面も氷っていてツルツルです!スニーカーやお洒落な靴で行きますとツルン!といった思わぬ事故になりかねません。(目下は湖です。本当に危険です)
防寒具と共に滑らないような靴で足を運ぶことをお勧めいたします。

今回初めて天神浜のしぶき氷を見た私は、そのスケールに思わず息をのみました…。
一角だけかと思いきや、天神浜のしぶき氷はその距離数kmにも及びます。
綺麗というよりも、圧巻という表現が合っているかもしれません。
何というか、それぞれが独特の形をしていて、育てば育つほど密接したしぶき氷同士がくっついて巨大なツルツルしたモンスターを連想させます…。

しかし、『あぁ、綺麗だなぁ。すごいな…』で終われないのが私です。
そもそもどうやってしぶき氷ができるのか知りたくなり、これを機に本を読んで勉強いたしました。
今まで『厳冬期にしぶきが上がることでしぶき氷ができる』といった内容はSNSなどでも発信されていますが、それでは『そもそもなぜしぶきがあがるの?』という答えには回答できなくなります。
私が読んだ本には、しぶき氷ができる要素は大きく4つあると書いてありました。
その4つは以下の通りです。
①淡湖であり、不凍湖であること
②荒波が発生する巨大な湖であること
③その荒波が湖岸に打ち当たり、波しぶきをあげる地形であること
④季節風のような強風の通り道になる地形であること
ざっくりお伝えするとこの4つになります。

猪苗代湖をご存じの方は想像できると思いますが、猪苗代湖が風で吹き荒れている時といったら…あれは湖ではなくもはや海です(笑)
ブラタモリでタモリさんが猪苗代湖を訪れた際には、その荒波を『行き場を失った怒りのようだ』と表現されていましたが、本当にそう感じます…。
私が撮影を行った日も、天神浜には強風が入り込み、その影響で湖面が絶えず『ザッパーン!ザッパーン!』と大きい音をあげていました。この『ザッパーン』こそが巨大なしぶき氷を作る上で大事な要素なのです。
猪苗代湖の中でも、ここ天神浜は季節風の通り道となっている為、特に強風が吹きやすい地形にあります。
その証拠に、グリーンシーズンには天神浜はウィンドサーファーでにぎわいます。
(余談ですが、ウェイクサーフィンをする私は、むしろ風は強敵であり、天神浜よりも北岸に位置する長浜で無風を好んでウェイクサーフィンをします笑)

その『ザッパーン!ザッパーン!』という行き場を失った怒りのような荒波が、厳冬期に絶えず吹くことにより、その水しぶきに濡れた周辺の木々が次第に氷ってしぶき氷となり、育っていく。
これが、なぜしぶき氷ができるのか、という質問に対する具体的な答えだと思います。
要素で上記した①、②は荒波が立つそもそもの条件として湖が大きくて不凍湖でなくてはならない、という事になりますね。
説明が長くなりましたが、伝わりましたでしょうか…。

ちなみに今回この記事を書くにあたって参考にさせていただいた本がこちら。
猪苗代湖 神秘的な氷の世界
磐梯山ジオパーク事務局で所持している本ですが、あまりにも面白くて昨晩家で読破してしまいました…(笑)
何せ作者である小荒井実さんという方がこの猪苗代湖のしぶき氷を、そしてしぶき氷の魅力を世に紹介した第一人者のようでして、文章からは猪苗代湖のしぶき氷愛が溢れ出ていました。
この本自体、前半で本の余白をあり余すことのない超ど迫力の写真でしぶき氷を紹介し、後半でそれぞれの写真や現象について詳しく説明をされているので、大変読みやすい本でした。

ただ美しいだけでなく、なぜそうなるのか。どうやってできるのか。
と色々と疑問を突きつけたくなる私にとって、気になったことはすぐ勉強できるこの環境は本当に有難いです…。
次回の氷シリーズは、樹氷について書きたいと思っておりますのでお楽しみに!