【レポート】火山防災シンポジウム

皆さん、こんにちは。
今回の記事では、8月25日に開催された『火山防災シンポジウム』についてレポートしたいと思います。
開催されてから時間が空いてしまいましたが、大事な内容でしたのでご紹介できればと思います。

今年から8月26日は「火山防災の日」に制定されました。
その前日である8月25日に開催されたシンポジウムでは、3名の講師による講演と福島県災害対策課による取組発表が行われました。

講演① 茨城大学の長谷川健氏による「吾妻山の噴火」について

長谷川先生の講演では、吾妻山が明治時代に大きな噴火をおこしたことやその噴火史加え、火山弾の研究から得られた新発見についてお話がありました。

この講演では、ゆっくり流れる溶岩が急な崖にたどり着き、火砕流が発生するというメカニズムや、火砕流が発生した後にこうした堆積物を母材とした土石流にも注意しなければならないということを教えていただきました。

講演② 産業技術総合研究所の及川輝樹氏による「御嶽山の噴火」について

10年前におきた御嶽山の噴火は火山噴火の一般的な噴火であったそうです。
しかし、どうしてこんなに被害が出てしまったのか、その原因や噴火のメカニズムについて教えていただきました。

こちらの講演の中で、2014年の御嶽山噴火の事例から火口に近ければ近いほど噴石が原因とされる死者が多かったというお話もありました。

噴火の警戒レベルが高い山には立ち入らないことや火口付近での滞在時間を短くするなど、リスクを減らす行動についても学びました。

また、火山噴火の被害は噴火直後の火山灰の降灰や火砕流だけでなく、火口から水蒸気になりきれなかった泥水が数年にわたり流れ続ける現象もあるという事も教わりました。

講演③ 磐梯山噴火記念館 佐藤公氏による「福島県の火山防災」について

東北地方と九州の火山では噴火の頻度が異なり、東北地方は噴火に慣れていないことや火口を観光地とする場所もあり、シェルターの必要性など火口観光防災について取り組んでいかなければいけない事を学びました。

また、火山防災マップを理解することの重要性や地学の学習が中学校の理科で終わってしまっているため、学んだ範囲を超えた火山噴火についての説明はだれかに教えてもらわなければ分からないという問題もあるそうです。

日本には111の火山があり、世界で4番目に火山が多い国であるそうですが、火山について適切に理解し活用する力が弱いことを知りました。

取組発表

福島県災害対策課の取組発表では、毎年行っている『火山防災訓練』についてと『地区防災計画の作成支援』として、町内会や自主防災組織等の地域住民への支援についてお話がありました。

火山防災について、各行政の関係機関が連携した『公助』のほか、私たち地域住民が事前に備える『自助・共助』の取組もあることを教えていただきました。

まとめ:講演の中で出た私たちができる備え

火口観光地(火口に簡単にアクセスできる観光地)での気を付ける点

・登山や観光に訪れる山が火山か火山でないか確認する
・火口近くの滞在時間を減らすこと(火口の場所を知る)
・異常が出ている山に入らない

火山地域での暮らしで気を付ける点

・火山防災マップを理解する
・火山ごとに発生する現象が異なることや同じ火山でも異なる現象が発生することを知る
・季節によって災害の規模が異なることを知ること(雪のある冬がより被害が大きくなる)
・火山から遠く離れていても火山灰など被害が発生することがあると理解する
・火山活動が活発でない時に火山災害について『いつ、どんな噴火が、どんな規模で、いつまでつづくのか』実際におきたらどうするか備えておくことが大切

行政機関ができること

・火山防災マップについて地域住民に理解してもらうため説明会を開くこと
・火山防災マップを地域住民に数年に1回再配布すること(紛失に備えて)
・避難壕(シェルター)を充実させること

講演内容の多くは磐梯山噴火記念館で開催されている企画展『吾妻山と御嶽山』の展示で知ることができます。
11月30日まで開催されていますので、ぜひ足を運んでみてください。
関連記事はこちら⇒【企画展のお知らせ】過去の噴火から考える 吾妻山と御嶽山

各講師がおすすめする本の紹介

シンポジウムの中で、3名の講師がおすすめする火山の本を紹介するコーナーがありました。
ぜひ、みなさんも図書館などでチェックしてみてください。

〇長谷川健氏おすすめ書籍『死都日本 著者:石黒耀』
コメント:フィクションだけれど、サイエンスとして正確な描写がある。防災を考える時にもいろいろな示唆がある。

〇及川輝樹氏おすすめ書籍『火山:地球の脈動と人の関わり 著者:藤井敏嗣』
コメント:教科書的な書籍を紹介。噴火のメカニズムや事例などがコンパクトにまとまっている。

〇佐藤公氏おすすめ書籍『ドキュメント御嶽山大噴火 著者:山と渓谷社編』
コメント:御嶽山の噴火の時に実際に助かった人の事が書いてある。なぜ自分が助かったのかが書かれている。

感想

火山は私たちに多くの恵みを与えてくれますが、一方で怖い面もあることを忘れないようにしたいと思いました。
シンポジウムの中で『山の素性を知って事前に備えることが大切』というお話もありました。

私自身も火山や火山防災について、まずは『知る』ことから始めたいと思います。
そして、磐梯山ジオパークとしてできる『火山』への備えや『防災教育活動』などについて、より深く考え行動していきたいと思います。

長いレポートになってしまいましたが、最後まで読んでいただきありがとうございました。

関連リンク

・内閣府「火山対策:防災情報」のページ
https://www.bousai.go.jp/kazan/index.html

・気象庁「火山防災の日」特設サイト
https://www.data.jma.go.jp/vois/data/tokyo/kazanbosai/02_shoukai.html

・福島県火山防災マップ(吾妻山・安達太良山・磐梯山・那須岳)
https://www.pref.fukushima.lg.jp/sec/16025b/kazanmap.html